六段審査合格、やっとできた恩返し。

こんにちは!剣道防具工房「源」の室木です!
11月19日名古屋市枇杷島スポーツセンターで行われました「剣道六段審査会」にて
六段を頂戴することが出来ましたのでご報告させていただきます。
今まで熱心にご指導いただいた先生方、剣友の皆さん、応援して下さった皆様、両親、
また剣道を始めるきっかけを与えてくれた兄に感謝いたします。
これに驕ることなく稽古に励んでいきます。

今回の審査には12年前祖父に買っていただいた防具で挑みました。
祖父のお兄さんは居合道八段、剣道六段の腕前でした。
ただ、祖父は昔剣道を習っていたと聞いていましたが続けてはいませんでした。
母や叔父にも剣道をさせることはありませんでした。
ただ、兄と私が剣道を始めるととても喜んでくれていたようです。
私が祖父の家の近くで行われる大会に出場するときにはビデオカメラを持って応援に来てくれていました。

そんな祖父に高校2年の秋軽く「じいちゃん、防具買ってよ!絶対全国大会出るから!!」とねだってみました。
そうすると祖父から思ってもいなかった返答が返ってきました。
「防具か!ええぞ!そのかわり一番ええやつやないと買わんからな!」

それから母とも相談して初めてのオーダーメイドの手刺防具を誂えてもらうことにしました。
防具を注文するときは本当に楽しかったです!
当時は面垂が肩幅より外に出ていることが当たり前で、短くしようと思っていた人は
なかなかいない中、私は大きく振りかぶって打つということを先生からご指導
頂いておりましたので、肩がスムーズに動くように通常よりも短く、
さらにナナメ刺にしてもらいました。
小手布団も道着にかかるのが嫌だったので短め!
胴胸については、「鬼雲」や「総刺」が流行っていたのですが時代に逆らい
重厚感のある「本雲S字」にしてもらいました!

出来上がったこだわりの防具をつけて最後のインターハイ予選に挑みましたが
祖父との約束は果たせませんでした。

関西の大学に進学し何とか全日本に出たい、祖父の期待に応えたいと稽古を積んでいた
3回生の冬、祖父は亡くなりました。
とうとう買ってもらった防具をつけて全国の舞台に立つ姿を祖父に見せてあげることが出来ませんでした。
私はとても悔しかったことを今でも思い出します。
その後叔父の好意で胴に母方の家紋を入れてもらいました。

 

最後の年、学生選手権(個人戦)予選ではあと一歩のころで敗戦。
学生優勝大会(団体戦)予選、繋いでくれたみんなの期待に応えることが出来ず初戦敗退。
全国の舞台にこの防具で立つことはできませんでした。

そして今回の昇段審査会。
審査前から防具の手入れをしながら必ずこの防具で昇段してみせると決意していました。

枇杷島スポーツセンターにつくと、大勢の受審者が開場を待っていました。
私はこんなに大勢が受審されるのかと圧倒されていました。
そして開場後観客席に防具を置き、受付に向かいました。
年齢によって会場が分かれています。案内どおり私は第1会場に向かいました。
第1会場に着くと雑誌やメディアで見たことのある方もおられ緊張感が増してきました。
受付では所属の都道府県、生年月日、名前を伝え受付票をもらいました。
受付票には番号が書かれてありましたがこれは受審番号と異なる番号でした。
欠席者もおられるようで、受付を済ませた受審者の中からコンピューターによって
組み合わせが決められます。
全体への説明が終わり、各会場に分かれると「101A」から受付番号、所属都道府県、名前が呼ばれます。私は「102D」でした。
受付票を渡すと中央の大垂に受審番号が貼られます。
その後すぐに面をつけるように指示を受け会場内で面をつけました。
面をつけると用意されたパイプ椅子に座るように指示され101組の立ち合いを見ていました。
見れば見るほど緊張してくるので途中で目を閉じていました。
立ち合いはA-B、B-C、C-D、D-Aの順で行われます。

101組のD-Aの立ち合いが終わると私の組のA-Bが続けて立ち合いを行います。
B-Cが始まったころ、私は祖父とその場に立っている気がしていました。
祖父から頂いた防具で大会で無いとはいえ全国の舞台に立っています。

自分自身の立ち合いはほとんど覚えていません。
あっという間に終わったという印象です。

私の立ち合いが終わってから1時間30分ほど経った頃、本部席から大きな紙を
持った方が歩いてこられます。
午前の部、前半の合否発表が行われました。

合格者はその場で呼ばれ整列し形審査の会場に向かいます。
その後形を行い合格を頂くことが出来ました。

今回合格することが出来、初めて祖父に恩返しが出来たと思っております。
近々墓参りに行こうと思っています。

次は来年の称号審査に合格し、祖父にもらった防具をつけて全日本剣道演武大会に出場したいと思います。
全日本剣道演武大会では恩師との出場となります。
これもまた私の目標のひとつです。

 

手刺防具